引越し屋の選び方II

その2 Hの見積もり(2007年10月6日)

そういうわけで、今日はHが見積もりにきた。

約束の時間は16時半で、事前に電話するような話だったが、電話無しで16時20分くらいに現れた。現れたのは60代くらいの男性で、スラックスにワイシャツで、黒いアタッシュケースを持っていた。ネクタイはしていなかったような気がする。

最初に、処分品を確認される。食器棚とワゴンとファンシーケース、布団、カーペット。それから、持っていく予定の大物について。後で思い出して炊飯器も捨てるといったのだが、箱に入るようなものは確認しなくてよいと言う。

パソコンラックがばらさずに玄関から出るかどうかを気にしていた。いやいや、余裕で出るだろう。この人は営業専門で、現場経験に乏しいのだろうか。ちょっと訝しく思う。

ダイニングテーブル、パソコンラック、本棚が6つ、こたつテーブル。押入れの中の衣装ケースが合計5つ。洗濯機と冷蔵庫も持っていく。こんなところだっただろうか。本が多いことを気にされていた。

ざざっと確認したあと、椅子にかけて見積もりに入る。最初のあたりで電卓の数字が39000円と打たれているのが見える。4万円は余裕で超えそうだ。やはり比較見積もりしないと納得できないような値段になりそうだと感じる。

見ていると、どうも6万を超えている様子。しかし、最終的に出てきた金額は56700円だった。一度66000円で計算した見積り額を二重線で消して、となりのもう一つの枠にその金額を書きこんでいた。作業員の数を一人減らしてこの値段にしたらしい。運転手を入れて作業員が4名だと66000円、3名だと 56700円だ。自分がバイトでこの引越しを3名でやれと言われたら文句たらたらでやると思う。バイト仲間たちもきっとそうだと思う。

作業員一人あたり13500円という計算らしい。純粋な輸送費が27000円と設定されている。仮に1階から1階の引越しで、作業員が1名だとしても40500円プラス消費税ということになる。これは今書きながら考えたのだが、そもそも基本料金が高い。

貴重品取扱、引越し前後・当日の作業の確認(梱包や、家具の組み立てを誰がやるか)、その他オプションについて、見積書を見ながらひとつひとつ確認された。このあたり、大手らしいマニュアルに沿った進め方だと感じさせられる。

無駄がなく、てきぱきと見積もりを勧める。「営業マン」という言葉が似つかわしい感じ。

4階から4階の引越しであること、本が多いことをあまり安くならない理由として上げていた。

「僕も、今度引っ越すなら下の階にしようと思ってんたんですけど」と苦笑しながら言うと、「下の階に引っ越して下さい」と言われた。この本は引越し屋のやる気をそぐようだ(……もっとも、僕だってこんな引越しは引き受けたくない)。この辺りで少し本音っぽい言葉を聞けたように感じた。

そういえば、書き上げた見積書を見ようと歩み寄ったとき、「いやいや、私がそちらに行きますから」と断るように言われた。これは細かな気遣いを心得ていると評価しておくべきか。

説明が一通り終わって、「後日、お返事しても云々」と言い終わらないうちに、それで構わないといわれた。一応、「いつ頃返事をいただけるのか」と聞かれたので、来週明けの火曜日か水曜日にと答えておく。

ささっと来てささっと帰っていった。無駄な愛想を振り撒かれたり、不愉快な思いをさせられるよりはこの方がよっぽどいい。

とりあえず、4階から4階のエレベーター無しの引越しであることと、本が多いことがネックであることは再確認した。見積もりで計上されたダンボールはS寸が30箱、MとLが10箱ずつだった。物はそんなにないが、本が多い分で実質2人分の引越しと同じくらいだと言われた。

明日はKが来る。そういえば今日は、「他にも見積もりを依頼しているところはあるのか」と聞かれなかった。これを聞かれると、他社を意識して、自社の安さを印象付けさせたり、強引に決めさせようとしたりという下心やプレッシャーがきそうで嫌なのだが、聞かれなければ聞かれないで、安くなるポイントが無い。今日は比較見積もりのせめぎあいが無かった。大手の余裕なのだろうか。

その3 Kの見積もり