引越し屋の選び方II

その3 Kの見積もり(2007年10月7日)

■Kの見積もり

午前10時の約束だったが、10分前にやってきた。こちらはといえば、シャワーを浴びて、服を着る途中だった。大急ぎでズボンをはいて出た。

やってきたのは小太りでめがねをかけた40代後半くらいの男性だった。薄い水色のシャツに灰色のスラックス、ネクタイはしていたように思うのだが、色も柄も記憶に無い。

見積もりはHよりもあっさりしていて、5分くらいでささっと終わった。Hの時にも聞かれたのだが書き忘れていたのが、エアコンについてだった。備え付けなので持っていかない。チェックするポイントとしては常識的なものか。

午前と午後のどちらで引っ越すかと聞かれ、「10月30日の方を想定してお聞きしています」というので、30日であれば午後の方がいいかなと思い、午後にする。

K が出してきた見積もりは63000円で、Hよりも高かった。うーん、つまらん。基本料金が35000円で、作業員が3名で39000円、小計が74000 円。そこから14000円引かれる。これは作業が午後だからだと言う。そして、消費税込みで総合計が63000円とのこと。

引かれる14000円のことを「午後引き」だと彼は言っていた。うさんくさい。確かに、引越しは朝から始めることが多いから、午後の方が空きが多いとは思う。しかし、午前が午後になるだけで14000円も引くのか。

本当は63000円より安く済むところを「14000円も引いています」というポーズをとることで、割高なまま安く印象付けているのではないか。

作業員1人あたり13000円という値段設定はどうだろう。Hより500円安いが、この差は微々たるものだ。作業員3名というのはおそらく運転手も含んでの 3名だ。基本料金(運送料金)はHが27000円に対し、Kが35000円だからそもそもKは高いし、Hの場合は運転手を潜在的な作業員として計算していた。

それともKの場合、実質的な作業員は運転手を入れた4名なのだろうか。うーん、それにしたって、基本料金が高いよ。

今回は「よそで見積もりは頼んでおられますか」と聞かれた。しかし、これも他社を意識して聞いたというより、返事をその場でもらえるのか否かを確認するために聞きやすい台詞だったからたまたまそのように言っただけだと感じる。

H もKも「悪徳業者ではない」と考えれば結構なことではある。逆にいうと、これで変に安かったらどこかで手を抜いているということだろうか。見積り用の営業マンがいるのはそこそこ大きな会社だからだろうか。作業服姿ではなく、スーツ姿で現れることに僕は多少イメージのギャップがあるようだ。

あとはAを残すのみだ。見積もり日時を決めるときに、迷うそぶりを見せたことから類推して、Aは僕がよそで見積もりを頼んでいると踏んでくるかもしれない。63000円、55000円という2社の値段設定から考えると、Aが最初に提示した3万円台はとても信じがたい。

■Aについての予備調査

どこかで安くするような工夫をしているのか。気になってAのウェブサイトを調べてみた。「朝からの引越しより、夕方からの引越しの方がお得」というようなことが書いてある。また、Aには「フリータイム」という制度があるらしい。これは、格安だが、何時に作業に着手することになるか、その日のその時間になるまでわからないというものらしい。

つまり、数をこなすことで一件一件の価格を押さえようとしているのだ。「フリータイム」にしておけば、同じ作業員が一日3件ないし4件をこなすことが時間的には可能になる。最初から午前便・午後便とわけているKの場合だと、一日多くても2件しかこなせない。

ウェブサイトに職員の集合写真がある。壮年の男女に若い男2人が2トントラックを背景に写っている。おそらく壮年の男女は社長夫妻で、奥さんを除いた3人がこの会社の作業員全員だと考えられる。場合によってはバイトがもう少しいるかもしれないが(若い男2人はそもそもバイトかもしれない)。

?? と思ったが、会社概要や車両台数などを見るとそうではなさそうだ。車両台数がかなり多い。引越し以外の運送の仕事もやっているようだ。看板の一つとして引越し屋も掲げているといったところだろうか。一般運送業務で空いているトラックを遊ばせておくよりは引越しに使っているのだろうか。

また、ウェブサイトには「引越し屋の選び方」、「引越し基礎知識」などのコンテンツがあり、安く済ませるためのノウハウが書かれている。そして、書かれている内容は一応筋が通っている。

なるほど、確実に安い値段は出してきそうだ。ただし、安くするためにこっち(客)が融通を利かせなければならないことがいくらか出てきそうだ。それを面倒だと感じるか、大したことないと感じるか。夕方からの引越しなんて迷惑なことはしたくない。もっとも、何が何でも安く上げたい、お金が無いという場合なら僕だって迷惑なんて考えないのだろうが。

■はみだしメモ

・Kの場合、サービスの資材はダンボールは大10ケースに、小40ケース、布団袋2つにテープが2つだそうだ。ここはM寸のダンボールがないらしい。

・こうやって分析めいたことをやっているが、僕は引越し屋との交渉を上手に進めることはできないのだなと思った。まさに「選び方」を紹介しているだけで、それが「よい選び方」につながるかどうかはこれを読んだ人の咀嚼の仕方に依るのだ。

・電話見積もりやネット見積もりを疑わしく思っていたが、正確に申告・入力すればある程度のあたりは問題無く出せそうだ。

その4 Aの見積もり